伝 彰義隊士横山光造所用陣笠
市指定有形文化財(歴史資料)幸手市郷土資料館
この陣笠は、彰義隊士の横山光造が使用したものと伝えられています。
寸法は、縦32.0センチメートル 横29.0センチメートル 高11.5センチメートルです。
鍔(つば)が反り返っている形から「端反笠(はぞりがさ)」と呼ばれるものです。
表面は、黒色の漆が塗られ、正面には笹の葉を図案化した「丸に九枚笹(まるにくまいざさ)」の家紋があります。ただし、現在、横山家の家紋は「丸に蔦(つた)」であるとの情報を同家の縁者から得ています。このことから、「丸に九枚笹」の家紋がなぜあるのか、現段階では明らかにすることはできません。
材質は、革。練革(ねりがわ)といい、牛革を火であぶり、または膠(にかわ)の水に浸して、うち固めたものです。鎧(よろい)の札(さね)や太刀の鍔などに用い「いためがわ」ともいいます。槌(つち)で打ちますが、革の筋を切ると弱くなったり、槌の跡がついてムラが出たりするので、力を入れすぎず槌に任せて打つことが大切だとされています(『練革私記』)。
鍔の裏側は朱漆が施され、幅10mm、厚2mmの鉄製の輪が31箇所(うち3箇所は脱落)鋲止(びょうど)めされています。
考察の結果、現時点ではこの陣笠が横山光造の所有物と断定できませんが、光造の所用品として横山家に代々伝えられたという事実に加え、通常の陣笠とは異なり防御性を高めたこの陣笠と、彰義隊士として戊辰戦争をくぐりぬけてきた柳剛流剣士 横山光造との関係性は濃厚であり、なおかつ江戸時代の武具としての陣笠研究にとっても有用な資料と考えられます。
この陣笠は、江戸時代の農村に生まれ、剣術を身につけ、大きな時代のうねりに巻き込まれながらも生き抜き、明治人として静かに幸手の地で余生を送った横山光造の人物史を物語る貴重な歴史資料です。
また、江戸時代に製作されたとみられる陣笠の所在は、横山家に伝えられたこの陣笠以外に現在市域では確認されておらず、希少性があり重要です。

更新日:2025年03月30日