「おびしゃ」行事と甘酒
幸手には、地域に受け継がれているさまざまな習俗がありますが、その一つに「おびしゃ」という行事があります。主に埼玉県の東部から千葉県、茨城県の西部にかけて分布する特徴的な行事です。
通常、秋から春にかけて行われ、弓を射る行事を伴うものや、一升飯を食べるものなどがあります。こうした行事には、あらかじめ豊作を祝う予祝行事や秋の収穫を祝う祭りという意味合いがあります。
幸手のおびしゃには弓を射るものはありませんが、お高盛りを始め、米を中心とした食べ物による直会の儀礼や甘酒を振舞うものがあります。このように、米を重視するおびしゃは、水利に恵まれた穀倉地帯である幸手の象徴的な祭りともいえます。
かつては、多くの地域でその年に採れた米を使い甘酒を造っていました。米は神社の所有する田で収穫されたものを使用する事例も見られます。おびしゃは、甘酒を振舞うところから「甘酒祭り」と呼ぶところもありました。
甘酒は、米と麹を合わせ発酵させて造ります。夜通し寝ずにかき回し続けなければならない大変な作業でした。原料の麹は幸手町の三河屋や仙台屋から購入しましたが、不慣れな作業で失敗もあることから、指導や製造を麹屋に依頼するところもありました。
残念ながら、現在では、祭りは簡略化され、甘酒を振舞う地域もほぼなくなりました。ところが、昨今の健康ブームで甘酒が注目されています。美肌や疲労回復などの効能を掲げ、飲む点滴と言われるなど、各地の土産品として目にすることも多くなりました。
米どころの幸手としては、昔から受け継がれてきた各地域の甘酒による「まちおこし」というのも一考ではないでしょうか?
更新日:2020年06月02日