令和5年度企画展『幸手のトンボ研究家 長須房次郎トンボコレクション』
長年トンボの調査研究に取り組んできた長須房次郎氏の貴重なトンボコレクションを紹介します
展示期間 :令和5年7月20日(木曜日)から8月27日(日曜日)まで
休館日:期間中の月曜日
ところ : 幸手市郷土資料館(幸手市大字下宇和田58-4)
入場無料
今回の企画展では、植物やトンボの研究家として、埼玉県東部地域における絶滅危惧種の保護活動とともに、希少な動植物の調査研究に努め、標本作りや記録作成を行ってきた長須房次郎氏が、生涯にわたり取り組んでこられたトンボ研究に焦点をあて、氏の貴重なトンボコレクションを紹介します。

コレクションの中でも貴重な「ベッコウトンボ」の標本

長須房次郎氏作成のラベル
長須房次郎 トンボコレクションの重要性
一つ目は、1950年代後半から1960年代にかけての利根川流域エリアに生息したトンボ類について、標本を丁寧に作って正確なラベルを添付した上で適切な保管方法でそれらをよい状態のまま維持管理されてきたことである。
もう一つの重要な視点は、調査の詳細を学会誌や同好会誌などに丹念に投稿されてきた点である。
数多くの発表報文とそれらの記述を裏付けるように現存する証拠標本群とを同時に見ることができる長須コレクションは、トンボ研究の分野で先生の後を追い続けている者達にとってたいへん重要な資産である。 〔日本トンボ学会会員 碓井徹氏 記〕


長須房次郎氏の生立ちと植物研究
幸手のトンボ研究家 長須房次郎氏は、昭和4年(1929)、吉田村大字上宇和田(現 幸手市)の農家に生まれ育ちました。
野良仕事を手伝いながら過ごした子ども時代、遊ぶ時間もようやくできた夏休みには、近くの庄内古川(現在の中川)で水浴びや魚釣りをしたり、トンボをとったりして遊びました。
埼玉大学埼玉師範学校を卒業後、昭和25年(1950)吉田村立吉田中学校の理科の教諭となった氏は、生徒と一緒に雑草の調査研究を始めています。
そうした活動の成果は、昭和31年(1956)、『江戸川上流流域西部の植物―野外植物篇―』として発表されています。
授業を行う長須先生(昭和28年)

吉田中学校 生物クラブ(昭和29年)
トンボ研究の道へ
昭和33年(1958)、埼玉県の県外派遣生として、国立科学博物館で植物とトンボの調査研究に一年間取り組むことになった長須房次郎氏は、 トンボ分類学の世界的権威で、国立予防衛生研究所の朝比奈正二郎博士と出会います。
このとき、博士から「全国的にみると、埼玉はトンボ研究の穴場、やってみないかね」と言われます。この言葉がきっかけとなり、トンボ研究を本格的に始めることになったのです。
翌34年、氏は一年間の調査研究成果を、「幸手町附近のとんぼ」として、学術研究誌に発表します。
こうして、トンボ研究者としての第一歩を踏み出したのです。

学術研究誌『自然科学と博物館』に発表した「幸手町附近のとんぼ」

更新日:2023年07月07日