身近な生物
田畑の中の集落で見られる生物
田畑の中の集落では、建物、屋敷林、生垣、畑、庭などがまだら模様のように組み合わさって、複雑な環境ができています。この複雑さによって、いろいろな生物が見られる場所となっています。
■哺乳類(ケモノの仲間)■
集落には多様な環境があるため哺乳類の餌となるものも多く、野生の哺乳類も生活しています。しかし、夜行性であるため姿はなかなか見られませんが、糞や足跡などの生息痕があちこちで見られます。

【ホンドタヌキ】
木の根本の穴などに住みますが、人家の床下に住む例もあります。
■鳥類(トリの仲間)■
幸手市では多種多様な鳥が観察できますが、農業地域の集落ではそのなかの半数近い種類の鳥が観察できます。これらの鳥の大部分が集落を採餌地として生活していますが、コジュケイやヒヨドリ、スズメあるいはハト科やカラス科などの鳥にとっては、集落は採餌地であると共に大切な繁殖地にもなっています。

【コジュケイ】
おもに地上で生活し、「チョットコイ」と鳴く。
■両生・は虫類(カエル・ヘビの仲間)■
両生類もは虫類も集落では屋敷林の周辺や生垣などでその姿を見かけます。しかし、以前に比べると姿を見かけることが少なくなってきました。

【アマガエル】
普段は樹木や草の上で生活しています。
■甲虫類(カブトムシの仲間)■
集落には屋敷林や庭先の植物を食べる種類、ゴミ捨て場などに生活する種類を多く見ることができます。

【キイロテントウ】
植物のうどんこ病の菌を食べます。
■双翅類(ハエ・アブの仲間)■
集落の周辺にはいろいろなハエ・アブの仲間が見られます。とくに屋敷林の周辺、庭などに咲くいろいろな植物の花、生ゴミや動物の糞などには、いろいろなハエ・アブの仲間が集まります。
また、ときには人家の中に入りこむものもいます。

【ハナアブ】
春、秋に見られ、いろいろな花によく集まってきます。
■鱗翅類(チョウ・ガの仲間)■
チョウやガの仲間はおもに集落で生活しています。そのため、集落では最も多くの種類を確認することができます。とくに、屋敷林には樹林が 残され、ヤママユガ科、スズメガ科などの大型のガやコミスジ、ゴマダラチョウなどの樹木に依存して生活するチョウを見ることができます。畑では季節の野菜が栽培され、人家の生垣や庭でもさまざまな花が咲く植物が栽培されています。このため、チョウやガが産卵や吸蜜のためよく集まり、絶好の観察場所となっています。

【ミドリシジミ】
幼虫はハンノキの葉を食べて成長します。
■トンボ類(トンボの仲間)■
集落の屋敷林や草地は、未熟な成虫の生活場所となることが多く、いろいろなトンボを見ることができます。トンボの幼虫(ヤゴ)は水中で生活していますが、成虫になると水辺を離れ、付近の草地や林で生活しながら、成熟した成虫となります。

【ナツアカネ】
夏の間、林や公園などの木陰で生活します。
川や池の周辺で見られる生物
川や池の周辺には、市域では少なくなった雑草や低木が茂る草地が残っています。ここにも人の手が入っていますが、他の場所と比べれば自然が豊かで、いろいろな生物が生息しています。
■哺乳類(ケモノの仲間)■
おもに草地や水辺を好む野生哺乳類が生活しています。しかし、この環境は大雨で水没したり、草刈などが行われ、不安定な生息環境となっています。また、野犬や野良猫がいたり、飼い犬を連れて散歩する人などもいて、生存が脅かされることもあります。

【ホンドギツネの巣穴】
江戸川に近い槇野地の畑につくられたホンドギツネの巣穴。
■鳥類(トリの仲間)■
川や池の周辺地域では、幸手市域で見られる鳥類のなかでも大多数の種類が観察できます。市街地でも見られるような鳥に加えて、カイツブリ、カワウ、サギの類、カモの類、シギ・チドリの類など、およそ30種類以上の水辺の鳥が見られます。ここで見られた大部分の鳥はここを採餌地として餌をあさったり、休息の場として利用していますが、なかにはオオヨシキリやカッコウ、あるいはヒバリなどのようにここを大事な繁殖の場としている鳥もいます。

【オオヨシキリ】
初夏にヨシ原で「ギョギョシ」と賑やかに鳴く声が聞こえます。
■双翅類(ハエ・アブの仲間)■
河川敷や堤防の草地、水辺の湿地や周辺の雑木林などにはいろいろなハエ・アブの仲間が生活しています。小さくて目立たないイエバエの仲間や、ミギワバエの仲間の個体数がとくに多くみられます。

【ホソヒラタアブ】
笹やぶや雑木林のまわりをゆったり飛んでいます。セイタカアワダチソウなどの花に好んで集まります。
■鱗翅類(チョウ・ガの仲間)■
チョウやガの仲間のほとんどは、幼虫が植物の葉を食べて成長します。河川敷や堤防には、たくさんの草本類が生育しています。ここで見られるチョウやガは、これらの植物に依存して生活する種がほとんどで、草原性のものです。移動力や繁殖力が大きく、世界各地に生息する種も少なくありません。

【モンキチョウ】
黄色い蝶で、堤防や草地でよくみられます。
■直翅類(バッタの仲間)■
江戸川や中川などの河川敷に見られる比較的乾燥した草地や、高須賀池周辺などに見られる湿った草地には、それぞれの環境を好む直翅類が生息しています。とくに湿った草地は、低湿地が多かった幸手市域の本来の直翅類相を残していると思われ、ヒメヒシバッタなどの特徴的な種類が少なからず生息しています。

【ショウリョウバッタ】
ショウリョウバッタの雄は、「キチキチ」という音を出しながら飛びます。
【ヒメヒシバッタ】
小型のバッタ。関東地方での分布は局地的で、低湿地に限って生息しているものと思われている。
農地で見られる生物
農地は、広い面積に単一の作物が栽培されているのが普通で、畦道や用排水路の縁にはいろいろな植物が生えますが、全体としては単純な環境を持つ場所となっています。今では、湿田や浅く細い用水路が無くなったため、生物の生息条件が昔よりせばまっています。
■哺乳類(ケモノの仲間)■
ここで見かける哺乳類は小型のものが多くなっています。耕作が行われている水田の岬にも野生哺乳類の生息痕が見られるますが、水田も休耕するとチガヤやヨシ・ガマなどが生い茂り、そこは野生哺乳類にとって格好の生息地となります。

【アズマモグラ】
体長13センチメートル程度で、地中のトンネルで生活し、ところどころに塚をつくります。
■鳥類(トリの仲間)■
耕作地およびその周辺ではおよそ30種類以上の鳥類が見られます。そのうちの半数近くがカルガモ、スズメ、キジバト、カラスなどのように一年中姿の見られる留鳥で、もう半数が季節により姿を現したり消したりする渡り鳥です。渡り鳥には夏鳥であるツバメや冬鳥であるタゲリ、ツグミなどのほかに、ムナグロのような旅鳥も見られます。耕作地は鳥たちの採餌地、休息地となっています。

【ツグミ】
ツグミは、秋にシベリアから渡ってくる冬鳥の一種です。
■両生・は虫類(カエル・ヘビの仲間)■
両生類は水中に産卵し幼生は水中で生活するためか、生体も水田や池沼などの水辺で生活しているものが多くみられます。また、ヘビの類は両生類ほど水と深い関係を持っているわけではありませんが、餌となる動物が水辺に多いためか水辺で見かけることが多い動物です。

【トウキョウダルマガエル】
トウキョウダルマガエルはトノサマガエルとよく似ていますが、関東平野ではトノサマガエルは生息していません。
■直翅類(バッタの仲間)■
耕作地の大部分を占める水田は乾田で、冬季には地表が乾いてしまいます。このため生息する直翅類の種類は少なくなっていますが、周辺の草地にはバッタの仲間が生息しています。
また、野菜などをつくっている畑には乾燥した草地を好む直翅類が比較的多く生息しています。

【コバネイナゴ】
コバネイナゴは、水田周囲の草地で多く見られます。
市街地で見られる生物
市街地は、多くの人々が生活していて建物が密集し、地面は舗装され、植物は少ししかありません。野生生物にとっては生息しにくい環境といえますが、中には人間の生活と深くかかわり、人間の活動にあわせて生活できる生物もいます。それらにとっての市街地は、餌が豊富で天敵が少ない良い条件が整った環境といえます。
■哺乳類(ケモノの仲間)■
市街地は大部分の野生哺乳類にとっては生活しにくい場所ですが、コウモリやネズミの仲間など人間に依存して生活するものがいます。下水や台所にすむドブネズミ、天井裏にすむクマネズミ、押入れや家具の裏などにすむハツカネズミは、家ネズミとも呼ばれるネズミです。コウモリの仲間は、住宅や倉庫などの建造物にすんでいます。

【アブラコウモリ】
夏の夕方にチョウのように空を飛んでいるのを見かけます。建物に住みつきます。
■鳥類(トリの仲間)■
市街地でも何種類かの野鳥の姿を見ることができます。鳥たちは人家の建物や庭木、生垣に巣作りの場としたり、庭や庭木、小さな空き地、ゴミ捨て場などの採餌地としたりして生活しています。市街地で見かける鳥は留鳥が多いのですが、なかにはツバメのような渡り鳥もいます。

【ヒヨドリ】
留鳥で年中みられます。秋冬の非繁殖期には「ピーヨピーヨ」と賑やかに鳴きます。
■トンボ類(トンボの仲間)■
市街地で観察されるトンボ類は、市街地の外側の池沼や河川で羽化したものが飛来したものです。倉松川周辺の住宅地ではハグロトンボやコオニヤンマも観察され、市街地でもトンボが生息できる環境が残っています。

【ウスバキトンボ】
成長が早く、プールや一時的な水たまりでも育ちます。
水の中の生物
川や池の中は、陸とは全く違う環境で、水中にだけ生息する生物のほかに、陸と水中を行き来する生物も見られます。また、川の水は流れていて(流水)環境がよく変わりますが、池の水は止まっていて(止水)環境があまり変わらないという違いがあります。そのため、生息する生物にも違いが見られます。
川の中
■魚類(サカナの仲間)■
幸手市を流れる河川は利根川水系で、河川の下流域にあたります。生息する魚類はコイ科をはじめ、海から遡上する魚類も見られ、種類数は豊富です。

【スズキ】
セイゴ、フッコ、スズキと呼び名が変わる出世魚です。
■甲殻類(エビ・カニの仲間)■
おもに江戸川や中川に生息する大型甲殻類には、十脚類のヌカエビ、スジエビ、テナガエビ、歩行亜目のアメリカザリガニ、モクズガニなどがいます。このうち、モクズガニは親ガニが河口付近まで下がり、稚ガニが川を遡上して江戸川や中川で親ガニになるまで成長します。

【ヌカエビ】
江戸川でみられます。ヨシなどが茂り、流れの緩い水際で生活します。
池の中

【ワタカ】
水草のほか、増水時には陸の草を食べることもあります。
■甲殻類(エビ・カニの仲間)■
大型の甲殻類のうち、おもに水田(止水)でのみ発生するホウネンエビ、カブトエビの2種類がよく知られています。

【ホウネンエビ】
体長1.5~2.0センチメートル程度です。水を張ったあとの水田に発生します。
■軟体動物(カイの仲間)■
おもに池沼で見られる貝類は、イシガイ、ヒメタニシ、ヒメモノアラガイですが、このうちヒメタニシは水質汚濁に強い種です。以前水田などにマルタニシが多く生息し食用としていましたが、最近ではその数が減少しているようです。

【イシガイ】
殻長6センチメートルほどの貝です。タイリクバラタナゴはこの貝の中で孵化します。
■半翅類(カメムシの仲間)■
水生の半翅類はすべて異翅目(カメムシの仲間)に属し、また肉食性で、魚や水面に落ちた昆虫などの体液を吸っています。また、水生半翅類の多くは飛翔能力を持っているため、学校などのプールで見かけられることもあります。

【ミズカマキリ】
体長4.0~4.5センチメートルほどで、小さい魚や昆虫などをつかまえて体液を吸います。
更新日:2020年03月27日