植物と生活
屋敷林

屋敷の周囲がこんもりとした樹木で囲まれた農家や、集落に沿って細長く帯状にのびた樹林が多く見られます。それらの樹林や生垣、竹林、果樹などは屋敷林と呼ばれています。「ヤマ」「ウラヤマ」と呼ばれることもあります。屋敷林がつくられた主な目的は防風ですが、母屋や納屋などの普請時には、林の木は建築用材としても利用されました。このほか、折れた枝や落ち葉は煮炊きの際の燃料として利用されたり、良質な材は必要に応じて木材としても売却されるなど、さまざまな用途に利用されました。また、生垣は境界表示や防犯、茅葺き屋根や藁葺き屋根を火から守るなどの実用機能のほか、美観の保持や装飾的機能も持っています。
社寺林

幸手には、規模の大きなものから小さなものまで、全体的に神社や寺院が多くあります。水田では見通しがよいことから、神社や寺院の社寺林は目立つ存在となっています。

日光街道中沿いには天神神社、幸宮神社、雷電神社、聖福寺、正福寺などの規模の大きい神社や寺院が集まっています。
市街地に社寺林が多いことは、幸手市特有の現象です。樹種は、ケヤキが圧倒的に多く、ついでエノキ、ムクノキ、イチョウなどで、いずれも巨木になっています。
桜並木


幸手のシンボルでもある権現堂桜堤の桜並木は、大正10年頃から桜の植樹が始まったと考えられています。昭和55年(1980)には埼玉県指定の「ふるさとの並木道」となり、サクラが旧幸手町の花に定められました。昭和58年(1983)3月には名勝に指定されました。平成6年の調査では、サクラの樹木は601本でした。幹の太さを見ると、直径20センチメートル以下、直径21~40センチメートル、直径41~65センチメートルの3つに大きく分けることができます。分布を見ると、ほぼ直線的に植えられた太い樹木のあいだのところどころに細いものがあることや、その反対のところもあります。こうしたことからは、当初に植えられた桜の樹間に比較的大きな増植か植え替えが行われたことが想像できます。
暮らしのなかの植物

【深い井戸を掘る上総掘の道具】
出典:幸手市史自然環境編
昔の暮らしでは、身近な植物を様々に利用し、生活から生まれた文化ともなっていました。現代ではそのような暮らし方がみられなくなり、植物と人とのふれあいが少なくなりました。
屋敷林や並木は自然の力から家や土地を守るだけでなく、材木、燃料、肥料等にも利用されてきました。中でもタケは用途が広く、水害を防ぐために植えられたり、建物や井戸掘り用具(写真)から農機具、生活用具まで様々なものの材料として使われました。

【ハンノキ(榛)の並木】
ハンノキは湿地を好む高木で、幸手でよく育ったことから、農作業、土木用具、材木、燃料、肥料等によく使われていました。水に強いため並木にも用いられたようです。
このほかにも、
・シュロからは丈夫な縄を作る。
・身近に採れるヨモギ、セリ等の野草やカキ、ウメ等の果実を日常的な食材に使う。
・綿や麻、絹を栽培する。
など、様々に植物を利用していました。
更新日:2020年01月10日